欲求(後半)※

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欲求(後半)※

(琥太郎目線) 熊狩…、勝利はオレに甘くて、優しい。 オレのしたいことをさせてくれる。気持ちのいいところを愛撫して、だけど執拗には触りもしない。いや、触れてくれないんだ。 オレには気持ちいいことだけを与えようとしてくれてるのは分かってるけど… それだけじゃ… 少し物足りない だからこうして、Domとしての欲をストレートに打ち明けてくれたのは嬉しかった。 「・…・んっ、っ…、くっ、」 ヴィ―ヴィ―… と振動する小さな起動音。 すごく間抜けな格好だけど、オレはベッドの上で自分で大きく足を開いてローターの甘い刺激に震えていた。 【いまから四十分、俺の名前を呼ばないで。琥太郎は我慢できるだろ?】 それが与えられた命令だった。 熊狩は拘束具なんて買ってたくせに、「使い慣れてない道具で傷つけたくない」って理由でネクタイでオレの両手縛った。 その後はじっくりと解した後孔に、小さなローターを挿入しての焦らしプレイだ。 (これっくらい全然平気…って、思ってたのにっ) 別に激しいプレイに慣れるわけじゃないけど、オレは自分のSub性を売ってきた経験があるんだ。 それに比べれば、たかが四十分そこそこの放置プレイなんて平気だと舐めてた。 (だめ、きもちいい…) 時計が撤去されたせいで今が五分なのか十分後かも分からない。 こんな恥ずかしい姿をpresentして、それだけなのに―――・…… 「だめ…、っ、あ、っ、っ…!」 「またイッた?」 「・……・ん、…、」 聞かれると正直にコクコクと頷く。 深くもない、絶妙な場所で振動を繰り返す玩具では本来イクことはできないくらい優しい愛撫なのに…、こんなにも気持ちいい。 「プレイでも俺以外を琥太郎ん中にいれたくなかったけど…ちょっと自分の性癖と喧嘩しそうだ。琥太郎はどう?キツくない?もし嫌なら」 「や、じゃない…、やじゃない!」 「そっか、エッチなんだね」 珍しく意地悪な返しをされて、かぁっと赤くなる。 (っ、だめだ…、甘えちゃダメだ。熊狩は分かってやってるんだ…っ) 気持ちが良くて体は満足できるのに、 熊狩が……、ほめてくれない ぎゅっと耐えるみたいに強く目を瞑る。 名前を呼びたい、だけど―――― まだダメ?  あと何分?何秒我慢すればいい? 「琥太郎?震えてるね」 「……、っ」 「玩具嫌?」 「いや、ぁっ…、ッ、やじゃない・…、」 「なら、どうして泣いてるの?」 ―――――――― 泣いてる? そんな自覚はなかったのに、うっすらと開いた視界は確かにボヤッといている。 「……教えて、琥太郎」 「これくらいっ、へいき…、ンッ、けど…っ、まだ、ダメ?」 はやく名前を呼びたい 手を握って欲しいし、抱きしめて欲しい たくさん名前を呼んでほしいのに………プレイなんだ、我慢しなきゃ。 「あと十五分時間あるけど」 「………、っ」 現実に、びくりと震えた。 たった十五分と思えばいいのに、まだ十五分もあるという現実の方がキツかった。 ローターは現実を忘れるには程遠い甘い振動しか与えちゃくれない。それに縛れた両手を見ると、きゅうっと腹の底が熱くなる、締め付けてしまう。 こんな緩い拘束と命令なのに、甘く痺れてる。 「琥太郎」 「がっ…、まんする、っ…、できるっ」 「なら、ちょっとだけ強くするね」 「――――あっ、あぁっ…ンっ」 ヴィ―ヴィ―と音はうるさくなったけど、そこまで振動は激しくはない。だけど恥ずかしい そうだ、さっきからずっと…  恥ずかしいという意識で気持ちよくなってんだ、オレは。 だからセーフワードなんて使わない。必要ない。 そのかわり、 (くまがりっ、みて…っ、みてて… ) 「うん、見てるよ」 そばにいてくれるから不安はない。 むしろ、こんな風に熊狩の気持ちで頭ん中をいっぱいにされるのは・… 幸せだ。     *  *  *  「さぁ、あとは お好きにどうぞ」 全部が終わった今、熊狩は土下座なんてものを披露していた。 そしてオレはシーツに覆われている。手も自由だ、どこも痛くない。 「………満足、した?」 「さっき鼻血出したの知ってて聞く?」 「でも、くま…、っ」 「琥太郎。もうプレイじゃないんだ、名前呼んでいいんだぞ」 おおかたプレイ中に泣かせた罪悪感が消えないんだろう、あわあわしている熊狩にちょっと腹が立つ。 相変わらず過保護だ、オレを絶対にサブドロップさせたくないって気持ちはすごく伝わってる。 けど、オレをそこまで大事に扱う必要なんかないよ。 名前なんてのはさっきまでたくさん呼んで、それ以上に褒めてもらった後だ。 信頼してるアンタとのプレイならオレはサブドロップなんてしないって、どうしたら伝わるんだろ…。 「勝利……」 「……へ?」 お前が教えた事だろ?オレ達は対等だって、DomもSubからの信頼が欲しい生き物だって! オレが”勝利”って呼ぶときは、いつもぎこちないし、呼ぶのもプレイに沼ってる時くらいのオレだけ。 「大丈夫、ほんとに…ぜんぶ嬉しかった」 「……っ!」 「ちゃんと信頼してる。でも、…っ、オレは、…………慣れなくて、言葉にうまくできないんだ」 いつか、本当にヤバいって思った時には、ちゃんとセーフワードを使いこなせるオレになる。 だから、そんなに不安にならないで。 「オレ達は、パートナーだろ?」 「琥太郎…!」 「あと、たぶん……、おれのせいもあるし…」 「ないない!!なんもないよ!!」 そう笑う熊狩に ぎゅっと抱きしめれた 「しょうり、……すき」 だから、離さないで。 ―――――――――――――――― 裏話。 ぐーぐーっと、今日も情緒のない豪快な寝相。 熊狩はだいたいコレだ。 隣に恋人兼パートナーがいたって、あまり触ってはくれない。 なので耳元で囁いてみる 「熊狩、縛って」 「んぐっ、…、」 「おねがい、…、おれを、しばってよ…」 もっと深く、心の奥まで    オレが 誰のものかを分からせて。 (それが、こんなことになるなんて…………) 翌朝、いつもよりしんどい腰に泣く琥太郎なのでした。(自業自得
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