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『アイ』はこの近辺に住んでいる野良猫。
少しぽちゃっとしている白い体に、脇腹と足にだけ、黒い毛が混じっている。
その脇腹の黒い毛が、ハート型に見えるから、私たちが呼んでいる名前は『愛』……アイ、だ。
「ご飯だね。少し待ってて」
一応、顔を出したものの、この部屋、私の私室にはご飯なんてない。
階下の部屋へ取りにいかなければ。
だけどいったん顔を出さなければ、『起きてくれない』と判断されて、よそへ行かれてしまうかもしれないから。
それは少し寂しいし。
「にゃっ」
アイはきっと私の言葉も、心づもりもわかるのだろう。
短く鳴いて、ぱたっとしっぽを振った。
さて、待たせることになるし、早く持ってこないと。
私は窓を閉めて、部屋の出入り口へ向かう。
お母さんはもう起きているだろうから、こんなに早起きをしたら驚くかな。
でもアイが早朝に来るのはたまにあるから、すぐ「アイが来たのね」って言うかもしれない。
思いながら階段を降りて、キッチンへ。
キッチンの戸棚に、アイにあげるご飯……缶詰のフードのストックが入っているのだ。
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