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「あぁ、起きてたのかい?おチビさん」
私を一瞥したベンお父さまは、ニコリと見知った笑顔を作った。
それでもユーリを離すつもりは無いらしく、またユーリが苦しそうに呻いた。
身体を起こそうとするが、後ろ手に縛られているようで起き上がれない。くそう。私に強靭な肉体があれば、こんな使い古した縄なんてフンッと引きちぎってやるのに。イメージは出来てるのに!!
キッと床に這いつくばりながら、ベンお父さまを睨み上げる。
「ユーリを、離して」
「あぁそんな目で見ないでおくれ。まるでアリアに泣かれているようで胸が苦しい」
まるで用が済んだナフキンかのように乱暴にユーリが落とされる。また私の上に落ちてきた。ひどすぎる。
「────でも、アリアとは何かが違うんだよなぁ」
「!?」
ぐいっと髪を乱暴に引かれ上を向かされる。そこには気味の悪いぐらいいつも通りの笑顔を貼り付けたベンお父さまが、私を覗き込んでいた。
「ぼくのアリアはこんな髪の色ではないし、瞳の色も違う。ぼくのアリアは君のように賢くないし、器用じゃないんだ」
目の奥が、昏い。
「最初はアリアに似ているから悪くないと思ったんだけれどね、やっぱりアリアと違うところに君の父親が見えてしまって。どうにも許せそうにない」
パッと手が離され、反っていた身体が床に落ちる。
「これはアリアお母さまもご存じなのですか。この所業は男爵家の総意なのですね?」
「おやおや、父親が違うと知っても驚かないんだね。……そうか、やっぱり君は知ってたんだね。ぼくのことを他人だと思いながらも”ベンお父さま”と笑いかけてくれていたんだね」
そうか、と聞き取れたのはそれだけ。ぶつぶつと何かを呟くただならぬ様子に私もユーリも理解が追いつかず固まってしまう。
「やはり賢い子だ」
あははは、と狂った笑い声がやけに耳の奥を引っ搔いた。
「そう、ぼくは君の父親じゃない。公爵家の御嫡男……あぁ、今は当主だったか。爵位だけの男爵家の次男の俺なんて視線すら交わせやしない、雲の上の人だよ。雲の上のまま、ぼく達とは違う世界でそのまま暮らしてくれればよかったんだ」
悲しそうな声色なのに、顔は笑っている。
「アリアは雲の上の神に見初められて、捨てられたんだ。ひどいだろう」
もう私たちの声は届いていないのかもしれない。
「アリアにした酷い仕打ちは、結果、誰が責められたと思う?全てアリアが引き受けたんだ。神様に非はないんだろうかって思ったよ」
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