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「公爵家の人に、身を粉にして働くからユーリも守ってって言う。だから、一緒に行こう。ユーリが行かないなら私も行かない」
「なんでいつもアンネリーゼは……」
歪んで歪んで、苦しそうにそう言うと下を向いてしまった。
「……うんざりだ。いつもいつもまとわりついて邪魔だったんだ。そうやって恩着せがましいのも、心底面倒だ。もう顔も見たくない」
繋がれていた手が強く、振り払われた。
ハッと視線を上げるのと、ユーリが私を睨み上げるのは同時だった。
「───アンネリーゼなんて、大っ嫌いだ……ッ」
ユーリの千切れるような声を、私の心が受け止めるところだった。
「みーつけた」
ニチャリと粘ついた声が真後ろからまとわりつくように落ちた。
振り返ろうとしたが、目の前にヌッと出てきた刃物に息を飲む。
「ひッ!たすけ……っ」
「やめろ!離せ!!」
騎士たちがこちらを見る。
「ほら、どこに行ってたんだ。探したぞ。遊んでばっかりいないで家の手伝いもしなさい」
慣れたような声色で、まるで父親かのように振舞う。騎士たちはこちらに気付いたのに、親子喧嘩だとでも思ったのか、やれやれと視線を流した。
追手は騎士たちに背を向け、あの臭い布を口の中につっこんで来た。
「……声を出すなよ。騒いだら片方を殺してやる」
ぐぅ、と生理的な吐瀉感が込み上げてくる。
私を布でくるむと「ん?眠くなった?そうかそうか、早く家に帰ろう」と担ぎあげた。
騎士は私たちに背中を向けた。こっちを見て!!気付いて!!
ユーリを、助けて
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