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そろそろ私がいる場所についてと、アダムの素性について(どうせ毒舌執事だろうけど!)教えてほしいのだが良いだろうか。別に期待はしてない。確信はしてるが。
というか、私、まだ寝巻姿なんですけど???
うら若き乙女が寝巻姿なんですけど???
「計算ではもうすぐ10になるはずですが、想定よりお小さくていらっしゃる。良いところ7.8の年頃でしょう。ふむ。しかし確かにアリア・サルージの面影はありますね」
サラリと笑顔で一言余計なアダムとやら。
未だ続く疲労で大した反応もとれず、私は半目になって失礼の権化であるアダムを見た。
久しぶりに生死をかけた全力疾走をしたせいで、筋肉痛になってしまった。全身が痛すぎる。
どうやらアダムは”閣下”の遣いらしい。
閣下とはまさに、公爵のことだろう。”雲の上の神様”のような人の遣いともなると、こんなに居丈高になるのか。おそれいる。
私は騎士の魂ともいえる剣を強奪……げふんげふん。もとい、ちょっとだけお借りして捕物はここだとお知らせしてあげたのだ。
私はそのまま気を失ってしまったが、どうやら助かったらしい。強そうな見た目をしていた騎士を選んで正解だった。先見の明がある。さすが天才ヒロイン。
そんなこんなで私がこの豪華なベッドで横になっているのも公爵の采配だろうか。
みんなはどうなったのだろう。あのヤンデレ野郎は。ユーリは無事だろうか。
いろいろと質問したいが、まだアダムのターンらしく口を挟めない。
「でも」
アダムはぐっと距離を縮めると、私の顔を覗き込んできた。
私の身体の上に影が落ちる。
「どことなく、ほのかに、しいていえば」
先ほどまで控えめに微笑みながら嫌味と毒を吐いていたはずなのに、細い目から温度のない瞳がこちらを見下ろしていた。
「閣下のお姉様に面差しが似ていないこともない」
ごくり、と喉が鳴る。
「……隠し味程度に」
「つまり似てないってことじゃない!」
この嫌味眼鏡が!と言いそうになったが、ぐっと堪える。咄嗟にちょっとだけ言い返してしまったのはご愛嬌。この口が、勝手に!
誤魔化すようにテヘヘっと照れたようにはにかんでキュルリンと上目遣いをしてみたが、またあの笑っていない眼がこちらを見ていた。
「おや、才女だと調査書にはありましたが教養はそこまでですねぇ」
この嫌味眼鏡がヨォ!(二度目の反抗)
顔はキュルンを維持し、ぐぬぬと布団の中で拳を固くしていると溜息とともに「先が思いやられる」とアダムは呟いた。
先があるのか?私とアダムの関係に?いや、この場合は私と公爵家になるのか???
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