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あの、と口を挟む。
アダムの神経質そうな眉毛がピクリと上がるが、ここで怯む私ではない。
ヒロインは物怖じしないと相場は決まっている!
「私はこれからどうなるのでしょうか……」
思ったより弱弱しい声になってしまった私に、アダムはまた値踏みするような視線を流した。
「あなたには、魔力がある」
間違いありませんね?と聞かれたが、その答えがどちらに転ぶかわからない緊張感があるというのに『そうです、私には魔力があります!ズバァーン!』なんて言える人間なんているだろうか。いや、いない。
ちなみに、ズバァーン!は勢いと意気込みを強調する効果音である。
「そして、それを巧みに操ると。見た、騎士がいましてね」
「見!?そ、その強そうな騎士はユーググッ!!」
情報が渋滞している!
魔術を操る件まで把握されているという驚きと、アダムから出てきた”騎士”という単語への反応がぶつかり合って身体が驚いたのか、喉がゴホゴホと咳き込み止まらない。
貴族令嬢らしからぬ所作にアダムの視線は冷たい。さすが毒舌執事。自分のキャラに忠実である。
「ハァ。私は心配です。こんな眉唾な話のために閣下のそばを離れるなんて」
アダムは眺めの溜息をつきながら水を口元まで近づけてくれた。遅いぞ。
「さて、早速ですが魔術を見せてください。さっさと帰りたい」
まるで私が何かをお願いしているかのような言いぐさである。だが、ここでやらないわけにはいかない。ユーリの無事を確認していないのだから。
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