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チッチッチと時計の秒針の音だけが聞こえていた。
時間にしてどれぐらい経った頃だろうか。体感ではアダムの睫毛の本数まで数え終わってしまいそうなぐらい長い時間、睨みあっていた。
埒が明かないと諦めたのはアダムが先だった。
「…………無事です。あなたたちを保護したのは騎士団長、ドラコニア伯爵です。そのまま保護されていると聞いていますよ」
今度はそちらの番だといわんばかりにアダムは顎をクイッと上げた。
執事キャラに俺様要素を足すだ、と……!?欲張りすぎだろう……!
アダムのジャケットの内ポケットをトントンと指で指し示せば、またすぐに伝わったようだ。
「なるほど」
ジャケットからすぐに探し物は見つかったようで、コロンと手の中で確認しホッとした顔をチラリと見せた。かわいいところもあるようで、私としてもホッとした。このまま強めの要素だけ増やされたら胸やけを起こすところだった。
いそいそと記章をつけなおすアダムを見ながら、ンンッと喉を鳴らし忘れてもらっちゃ困ると存在をアピールしておく。
「ドラコニア伯爵、は……その、王妃派、なんですか?」
「さて、なんのことだか」
「次はその仕立ての良いスーツにしますね」
「やめなさい!!」
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