ヒロイン、捕まる

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 ここに母さんや父さんはいないし、やっと受け入れてくれそうだった男爵家にはもう戻れそうにもない。アニーやジョンとアッシュにもさようならは言っていない。おまけにユーリには大嫌いだと言われてしまった。  あんまりじゃないか。どうしてこうも私から奪っていくのか。  私が何かしたのか?男爵家に来たのも私から売り込んだのではない。母さんや父さんが私を連れて村へ逃げたのだって、私がお願いしたのではない。アリアお母さまが公爵家に奉公に行ったのだって、私のせいじゃない。なんせ生まれてないからね。  もうつらくて、悲しくて、心細くて……私の身体はワナワナと震えていた。  アダムに見栄を張ったために魔力枯渇状態でちょっと寒気を感じているが、これはブルブルではなく、ワナワナで間違いない!  元を正せば、雲の上の神様とやらの公爵閣下が元凶なんじゃないか?権力に物を言わせて何人もの人生を狂わせているじゃないか。権力者はいつもそう!  これがドアマット系ヒロインの運命だとでもいうのだろうか。  そう、ドアマットとは。いわゆる周囲から虐げられ何度踏みつけられても健気に耐えるヒロインである。まさしく私のことである。つらいことがあればあるほど、後々訪れる幸せが骨身に沁みるのだ。
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