40人が本棚に入れています
本棚に追加
「……あなたは何者ですか」
私を観察するようにじっと見るアダムの視線に、どう答えた方が良いものか悩む。
私の実父である公爵はアダムを遣いに出し、私の存在を確認しに来た。
消すだけならいつでも出来た。それをしなかった。それが答えだろう。
私が目覚めたこの部屋はきっと公爵が所有する建物なのだろう。調度品の一つ一つが男爵家とは格が違う。
清潔で豪華なベッドに、身の回りの世話をしてくれていたメイドたち。現時点ではとても丁重に扱われていると感じる。
そして、私は魔術を使いこなせる。これは魔力を保有している貴族の一部、特権階級の中でも強い武器になる。
魔力を保有している人間は貴族の一部であり、その魔力を体外に出す【発現】の段階に行くのも稀だからだ。つまり。
────きっと公爵は私の存在を手に入れ、新しい駒にしたいはずだ。
「何者だったら、私のお願いを叶えてくださいますか?」
アダムの視線をまっすぐ返す。
従順な駒として使いたいなら、それなりの報酬が無くては。
「……閣下は、あなたを判断しかねている。公爵家にとって、吉星か、はたまた凶星か」
「私は使えますよ。どうせなら頭の良い人に使われたい」
私の答えが意外だったのか、細められていた目が丸くなった。アダムの瞳は綺麗なセピア色だった。そうしていると結構若く見える。
「同感です」
私の敬愛する閣下は人遣いが荒いですからね。退屈させませんよ。と、アダムは作り物ではない自然な笑顔でそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!