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「アリア・サルージが、あなたを渡さないと言っているのですよ」
「え」
どうせ公爵家に引き取られることになるなら、こちらにも条件がある!と雇用条件を交渉する段階に移ったが、まさかの保護者の妨害が発覚だ。
「そもそも、あなたを見つけたのは閣下が先でした。なのに二度も彼女にあなたを隠されてしまったんです」
アダムはこめかみをぐりぐりと揉みながら、苦労を語り始めた。
現代において、魔力がある人間は数が減ってきているのが現状だ。
私の前世の時代では魔術師はもっぱら人間兵器のような扱いだった。国土を拡大したい国王の命で戦場の前線に立ち、兵力として魔術を行使していた。
しかし、アダムの口ぶりから現代は戦の無い平和な世の中であり、魔術師は兵器としての需要はないらしい。よかった。
現代では魔力は権力の象徴であり、魔力を家門外に出すわけにはいかない。
そんな背景もあり、公爵家嫡男との関係が噂になっていたアリアお母さまが急に退職。念のために調査を行えば、妊娠の兆候有と情報を掴んでいた。
もし公爵家の御子なら魔力がある可能性は0ではない。
出産後に御子を引き取ると申し出たが、のらりくらりとはぐらかされ。数年経って死産だったと手紙が返って来ただけだった。
しかし墓を掘り返しても遺骸や骨はなく、赤毛が一房だけ棺に入っていた。
秘密裏に彼女の身辺を探れば、同時期に男爵家の侍女が一人子どもを出産し退職した記録があった。
足取りを追い、魔力鑑定に強い魔術師を商人に同行させ探らせ、やっと御子を見つけた。
閣下と同じ色の魔力を持つ、子どもを。
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