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「……まあいいんですよ。春先に奥様が儚くなり、本家でも色々とありましたので、すぐにあなたを引き取りに行くタイミングではありませんでした」
「そうだったの……それは……」
アダムはそっと優しく目を伏せた。
が、次の瞬間、カッと睨まれる。
「それでなんです?今度は奴隷商人の検挙に、騎士団に姿を見られるだなんて。ありえません。王族にあなたの存在が知られてしまいました。公爵家があなたを迎えるタイミングとして、最悪です」
王族……!話がどんどん大きくなっていってる……!?
「喪中ですよ。そんな時に愛人と庶子を引き取るなんて。重ね重ね、ありえません」
愛人、と庶子……?
ハテ。と頭をひねって、そういえばと気付く。公爵から見たら私は庶子で、つまり、愛人とは。
「アリアお母さまは愛人さん、なの?!」
あのヤンデレ野郎がそばにいて、公爵の愛人を務められるだろうか?とヤンデレ野郎がヤンデレに至る心中を察する。なんてむごいことを。それは病むわ。だからと言って私を売ろうとしたことは許さないが。
「おっと、失礼しました。子どもの前で不適切でしたね。あなたと話していると感覚が狂います。閣下と彼女はこの10年、一度も会っておりませんので正しくは”元”です。しかし、社交界はそうは思わない。火のないところを燃やすのがお好きな方々ばかりなので」
私だったからよかったものの、中身が本当の子どもだったらトラウマ増築してるところだよアダム。
大型失言は一旦、無かったことにして苦労を労わるような顔を作っておく。本当の10歳がここまで気遣い出来ると思わないでほしいところだ。
「アリアお母さまも公爵閣下の元へ一緒に行くの?」
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