40人が本棚に入れています
本棚に追加
会えていなかった時間を埋めるように、都合があえば顔を見に行った。毎日、毎日、女の中に少女を探した。だが、異変を感じるのはすぐだった。
幼馴染は身籠っていたのだ。
当時のサルージ男爵は隠そうとしていたが、男は疲れ切った様子の幼馴染の傍にいた。とても傷ついた顔をしていた幼馴染を放っておけなかったのもあるが、一番は自分の知らないアリア・サルージが許せなかったからだ。
そして男の献身と度量を見直した男爵は、男をサルージ男爵家へ迎え入れることにしたのだった。
男はもちろん、妻の汚点ごと受け入れるつもりだった。
しかし妻は汚点を隠すことにした。
汚点が目の前からいなくなった妻はだんだんと以前の”幼馴染”に戻っていった。
やっと元の世界に戻ったのだと思っていたのに。
汚点は再び、妻の前に現れた。
妻に似ているようで、どこか似ていない少女。
妻のことを愛しているからこそ、違う部分に気付いてしまう。
あの日。妻が傷ついた顔で帰郷した日。
妻の心に棲みついていた男の影に。
それでも男は受け入れようとした。それが妻の望みなら、否は無かった。
だが、だめだったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!