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思わず頬が持ち上がっていくのが抑えられない。
地獄のような二人の様子を見て、ついにはクスクスと笑いが漏れてしまった。
それを幽霊かのように見やるアリアお母さまの顔を覗き込んだ。
「……アリアお母さまが、今、何を考えているか当てましょうか」
アリアお母さまの顔には力や感情のようなものは残っていなかった。初めて見る表情だ。媚びてもいない、傲慢でも、怒りもない。
「ベンお父さまの告白を聞いて、アリアお母さまが今なにを考えているのか。娘の私にはよくわかりますよ」
ええ、この天才ヒロインである私ならね。
両の手で弧の字をつくり、弧と弧を合わせ中心に力を込め心臓の前で構える。
これは古武術の構えではない。『愛のポーズ』である。
「ベンお父さまのこと、可愛いと思っていますね!!!」
『愛のハンドサイン』をアリアお母さまに突き出し、ウインクをお見舞いする。
刮目せよ。このヤンデレ仕草。
ベンお父さまはアリアお母さまからの最後通牒を恐れて、自分の殻に閉じこもったのである。自分んの殻の中にアリアお母さまを引き込んでしまいたいと思っているのにも関わらず、最後はアリアお母さまの心を守ろうとしたのだ。
天才ヒロインにはズバッとお見通しである。
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