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「いい加減にしなさい!」
「そうですね、話を戻しましょう。今回の顛末を説明します」
キリッと顔に力を入れ、話と空気を戻す。
今回の顛末とは、もちろん私の考えた筋書きのことである。
「ベンお父さまは、最近のアリアお母さまご様子が変わられたことに気付いていたそうです。その上で、アリアお母さまの心を守ろうとしてプレゼントを贈ることにしたのです」
プレゼントは【私を消す】ということだったが。
「私もずっと部屋にいるのは嫌だったので、ユーリも入れて三人で街へ行きました。私から一緒に連れて行ってほしいとお願いしたのです。そして運悪く巷で問題になっていた人さらいに遭遇して、偶然通りがかった騎士団の方に助けて頂きました」
嘘は言っていない。言っていないことはあるが。
「そして、ベンお父さまは自分の行動が裏目に出てアリアお母さまが離れていくんじゃないかと怖がっているのです」
これも嘘ではない。要約の問題である。
あくまでアリアお母さまとベンお父さまには仲違いしてもらっては困るのだ。
だって、二人が男爵家からいなくなってしまったら、男爵家を中心としてつくられていた使用人家族たちはどうなるのだ。
「違うんだ、アリア、ぼくは……」
「違いません」
予想通り、だいぶベンお父さまの都合の良いように脚色……じゃなかった、情報の切り取られ方をした筋書きを訂正しようとしてきた。
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