ヒロイン、裁く

11/15
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
 キッと睨み、ベンお父さまのところへツカツカと近づく。  ぐわしっとベンお父さまの手を握り引っ張……れ、なかったので、もう一度ギロリと強く睨み上げる。 「ベンお父さまは、アリアお母さまが大大大好きなんです。私ぐらいの頃から好きみたいですよ。違いますか?」 「いや、それは違わないが……」  話を逸らし、畳みかける。   「そして、男爵領で問題になっていた奴隷商人は壊滅しましたが、領主としてやるべきことは山積みです。ベンお父さまをここにお留守番させている場合ではありません」  今度はアリアお母さまの手を反対側の手で握る。  とっさに逃げられそうになったが、忘れてもらっちゃ困る。  二人の手を繋ぎ合わせ、魔術でちょっと結んでおく。 「私には魔力がありますので、魔力がある本当の父の元で学ぶことがあります。今までありがとうございました。お二人で末永く仲良く暮らしてください」  アリアお母さまは驚いたように手を引こうとするが、反対にベンお父さまは「アリアの手が傷ついてしまうよ」とどさくさに紛れて手を握っていた。隙あらばヤンデレだ。 「だ、だめよ!うちに魔術師でも呼べばいいじゃない!」 「そんなに私を公爵家に行かせたくないのですか?」 「当り前じゃない……」  アリアお母さまの声が揺れた。 「おかしいですね。辺鄙な農村には私を捨てたのに。捨てた子が高位貴族の仲間入りするのは許せないとは」
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!