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キッと睨み、ベンお父さまのところへツカツカと近づく。
ぐわしっとベンお父さまの手を握り引っ張……れ、なかったので、もう一度ギロリと強く睨み上げる。
「ベンお父さまは、アリアお母さまが大大大好きなんです。私ぐらいの頃から好きみたいですよ。違いますか?」
「いや、それは違わないが……」
話を逸らし、畳みかける。
「そして、男爵領で問題になっていた奴隷商人は壊滅しましたが、領主としてやるべきことは山積みです。ベンお父さまをここにお留守番させている場合ではありません」
今度はアリアお母さまの手を反対側の手で握る。
とっさに逃げられそうになったが、忘れてもらっちゃ困る。
二人の手を繋ぎ合わせ、魔術でちょっと結んでおく。
「私には魔力がありますので、魔力がある本当の父の元で学ぶことがあります。今までありがとうございました。お二人で末永く仲良く暮らしてください」
アリアお母さまは驚いたように手を引こうとするが、反対にベンお父さまは「アリアの手が傷ついてしまうよ」とどさくさに紛れて手を握っていた。隙あらばヤンデレだ。
「だ、だめよ!うちに魔術師でも呼べばいいじゃない!」
「そんなに私を公爵家に行かせたくないのですか?」
「当り前じゃない……」
アリアお母さまの声が揺れた。
「おかしいですね。辺鄙な農村には私を捨てたのに。捨てた子が高位貴族の仲間入りするのは許せないとは」
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