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「なにもわかってないくせに生意気なことばかり!子どもは親の言う事を黙って聞いていればいいのよ!!」
ぶわりとアリアお母さまの叫びが落とされる。
こんなにも激しく激昂する姿を私は見たことがない。
「農村に捨てた?ハッ、殺されなかっただけでも感謝しなさい。あなた、公爵家に行ったら殺されるわよ」
アリアお母さまの緑の瞳が血走って見えた。
「上級貴族は私達と常識も価値観も違う。わかりあえない。あそこは魔窟よ」
ごくり、と喉が鳴った音が他人事のように感じる。
「でも大丈夫。私は”良い子”のアンネリーゼを殺したりなんてしないわ」
「……アリア」
一転、優しく撫でるような声になった。
ベンお父さまが気遣うように華奢な肩を包み込む。
「あなたは男爵領で一生飼い殺される運命なの。それ以外は許さないわ」
低く、そう吐き捨てるように言ったアリアお母さまの顔は、泣いていた。
まるで、傷ついてボロボロになった心から血が流れるように、涙が流れ落ちていた。
「アリアお母さまって、過保護ですね。私が傷つくんじゃないのかと不安なのでしょう。ご自分の時のように」
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