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「ほら、まるくおさまったでしょう」
二人を置いて先に地下部屋から出してもらって、すぐアダムに抱き上げられた。
わかりますよ。これからは夫婦の仲直りの番でしからね。子どもはすぐ退散しますよ。さっきもベンお父さまに『さっさと行け』というような目で睨まれましたからね。
そして階段を登るアダムにドヤァと言ったのだ。
やればできる子なのよ、と。
やれやれ、とアダムが私を下し膝をついた。
「お見事でした」
そしてカシャンと冷たい感触。すかさず腕輪をつけられたようだ。
そんなに警戒しなくてももう魔力は僅かですって。
「今度はそっちの番よ。ユーリを守って」
「ええ。約束は守りますよ。その証拠にこちらをお渡しします」
アダムはわかっていたという表情で胸ポケットから何かを取りだし、腕輪をいじる私の手を広げさせるとコロンと落とした。
藍色に白い花弁のカボションピン。
脳裏に噴水の音とユーリの赤い顔が浮かぶ。
「……あっ」
「なかなか良い品ですね。こちらをアンネリーゼお嬢様へ、と言付かりました。ロマンティックですね」
そんなんじゃない。ロマンティックなことなんて、何もない。
贈り物の言葉とか、シチュエーションとか、色々言って悪かったとは思うよ。けどさ。
こんな、つき返すことないじゃないか。
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