ダガーの十年と、これから

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おまけ 「ダガー、聞いてないよ」  まず第三王子にダガーが会ってモカを紹介するという流れになったのだが。今まで見たことがないくらい真剣な顔の第三王子にそんなことを言われ、ダガーはきょとんとした。 「なにが?」  二人きりの時は敬語は要らないという約束なのでいたって普通に喋っている。こういうところが第三王子の腹黒さを抜きにした気さくなところだ。 「君の至宝があんな可憐なお嬢さんだとは。花束の準備が間に合わないじゃないか」 「あいつ男ですけど」 「……。今のは忘れてくれ」  ちょっと好みだったんだ、と察した。 「なんで人間の男って美人に弱いんだかな」 「本能だよ、私でも抗えないね」 「獣人にはない本能だからわからんな」  種族の違いから好みが違うし、そもそも人間の美形というのがよくわかっていないダガー。しかも第三王子となれば様々なご令嬢と交流してきたはずなのに。美人に慣れてるというわけではないらしい。  そうして初めて三人は対面をした。少しだけ眉間に皺を寄せて目を細めている第三王子に、ダガーの件で機嫌が悪いんだろうかと思っているモカだったが。 「わかっていても眩しい、直視できない」 「光魔法使ってませんけど?」 「いいんだ、私の問題なのだ」 「貴方は瞳の色素が薄いですからね、光を過剰に感じるんでしょう」 「ところで娘が生まれる予定はないかな?」 「まだお相手もいませんが……?」  二人の会話に我慢ができずダガーが吹き出すのはこの後すぐの事だった。
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