ロジクスから「炎獄」へ そして子孫へ

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 いろいろなことがあった。妻と過ごせた時間がほぼなく、もう一度会いたいと思っていた人にも会えなかった。義理の息子とギャーギャー騒ぎながら過ごした時間も楽しかったが、これもわずか三年ほど。しかも魔法教会の目を欺くために対立しているようにも見せていた。それでもシャロンや孫たちに囲まれ幸せな人生だったと思う。  大事にしまっていたローブを最近はまた羽織るようにしている。あの時の出会いが、彼の言葉が。そして自分の決意と行動が子供たちの未来を変えたと信じたい。 「おじいちゃん、寒くなってきたからもう中に入ろう」  テラス席にいたのだが同居するひ孫が中から出てきた。シャロンの子供もまた結婚と出産が早かったのでグレイスにはひ孫が何人かいる。その中でもこの子は特別だ。  エテルの面影があるこの子は、すぐに普通の子ではないとわかった。まず魔力の高さがグレイスとシャロンが危機感を抱くほどに高すぎた。他の魔法使いにバレないように、封印魔法を何重にも施してようやく周りの目をごまかせている。  周囲にばれたらまた戦いの道具にされてしまう。そのため少し人里離れたグレイスの家に一緒に暮らすことになったのだ。この子は物心ついた時からずっと何かの研究をしている。その内容は難しすぎてさっぱりわからない。 「勉強するんだったら本当はもっと良い学校に行ったほうがいいんだがね」 「教師のレベルが低すぎて私には必要ないから大丈夫」 「はは、確かに」  わずか十歳のひ孫は淡々と語る。だが嫌味ではなく事実だ。実際この子の知能についていける教師はおそらくこの辺にはいないだろう。王都に行こうものなら王家に引き抜かれてしまう、それだけは絶対に阻止したい。  しかし、学校というのは勉強するだけの場所ではない。人との関わり合い、対話術、協力し合う心。人としての大切な成長を学ぶ場所でもある。同世代の友達ができそうにないのだからなおさら複雑な気分だった。かけがえのない仲間は、学校から始まるものだ。 「おじいちゃん」 「ん?」 「ありがとう、私に何も聞かないでくれて」 「聞いたとしても、じいちゃんじゃよくわからないだろうからな」 「私も何をやっているのかあまり他の人には話せない。でも、これだけは一応言っておきたくて」 「うん?」 「私がやっているのは、私のおじいちゃんの願いを叶えたいから」  私のおじいちゃん。グレイスの事では無いのはわかった。それを聞いて目を見開く。
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