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「不思議なものが残ってるなって思ってたけど。そうだったんだね」
久しぶりに実家に戻ったモカは自室で寝て、明け方に夢を見た。モカの家には大昔の魔法使いが羽織っていたローブが大切にしまわれていた。保護の魔法までかけられているので、誰かの大切な品なのだろうとは思っていたが。なぜ残っているのかなどが伝わっていないのでそのまましまっていた。
伝わってきたのは、言葉や研究資料だけではなかった。確かに彼らの人と人のつながりが形として残っているのだ。魂の研究をするからこそ命の大切さを物心ついた時から学んで欲しい。そんな思いから一族は山の中腹にずっと暮らしているのだ。
「ロジクスの時から数えて約二百年か。あいつにとっては瞬きをするような時間だけど。やっぱり長いな」
こんなかけがえのないものを瞬きするような時間で通り過ぎてしまうとは。全てを知っているからこそ、あれの退屈は永遠に終わることがない。人では無いのだからそれが、全く苦になっていないのが幸いなのか不幸なのか。
逆にモカは全てを知ることができるのに、あえてそれを知ろうとせず不便な道を選んだ。この世すべての研究者や魔法使いに知られたら世界で一番愚かな奴だと言われるかもしれない。
「それでいいんだ。だって僕は、昔からみんなと遊ぶのが好きだから」
一人ひとりの生き方にルールや法則などない。そしてきっと間違っているものもない。探求を続けるのも遊び尽くすのもきっと同じことだ。自分がやりたいと心から願ってやっているのなら。
もうすぐ自分の名前で魔法学校が開校する。たった一年で学校が作れたのは王子の支援と後押しがあったからだ。
「勉強っていうより、楽しく遊びながらいつの間にか学んでるっていう授業にしたいな」
勉強ができる子にとっては退屈かもしれないけれど。その退屈さえも楽しむようなそんな学校を。
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