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一番上の姉が慌てて伯父の家に走った。この村には当然医者などいないが、エテルの魂を受け継ぐものは高い知能を持っている。そのため医療を学び村の人たちの怪我や病気を見てあげるのがこの村の長年続けてきたことだ。要するにモカの家系は医者代わりなのだ。
モカは風邪などひいたことがない。ヒヒ草を食べて夜笑い疲れて気絶するように眠っても翌日ケロッとしていた。毒キノコを食べても平気な子だった。腐りかけの肉を食べてもお腹を壊したことなどなかったのに。
モカの体調不良など経験していない家族はあたふたしていた。家畜と畑の世話に行っている父は今この場にいないが、もしもいたらモカを抱えて伯父の家に飛び込んだに違いない。
駆けつけた伯父があれやこれやと症状を聞いて、実際に膝などを触り確認する。
「どう? 大した事なさそう?」
「疲れてたの?」
姉たちが次々と心配そうに問いかけるが、ショットは黙り込んだままだ。いつもなら何かしら返事は早い、考え込むなど今までなかったのでどんどん皆に不安が広がる。
「これは、いやでもまさか」
「な、なに? 大丈夫なの?」
恐る恐るといった様子でモカの母が心配そうに問いかけた。
「慎重に調べたい、少し時間をくれ」
そう言うと物々しい雰囲気で部屋を出てしまった。自宅には医療に関する本がたくさんあるので何かを調べに行ったらしい。
その様子をモカは呆然とした様子で見つめていた。モカ自身もてっきり大した事ないと言われるだろうな、と軽く見ていたからだ。
この時家族全員頭によぎったのは、モカの寿命のことだ。魂を使った魔法を使い寿命が半分減った事はもう既に全員知っている。
モカの話ではあと三十年ほど。五十歳にも満たずに命を落とすことになる。全員が青ざめる中、とうとう母が大粒の涙を流し始めた。
「モカ、お願いだから私より先に逝かないで!」
「お母さん、縁起でもないこと言わないの!」
「だって……う、うう」
姉が一応反論をしてくれたが、おそらくみんな考えている事は同じだ。
寿命が減ったから、体のあちこちにガタが来ているのではないか? これからどんどん病弱になって残りの三十年も普通の生活ができないのではないか?
自分の体に異常が起きたことよりも。母や姉たちの泣き顔など見たことがなかったモカは心苦しくなる。
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