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一年に一回は帰っていたと言っても、結局家族全員で過ごした時間はほとんどない。性格が変わっても腫れ物を扱うような態度はせず、今まで通り接してくれた家族には本当に感謝している。
何も恩返しもできていないのに、これからはもしかしたら生活で面倒を見てもらわなければいけなくなるかもしれない。上の姉四人は既に嫁に出ているし、嫁ぎ先の家のことや子育て、家畜の世話もある。下の姉二人だって決して暇ではない。何より、先程の母の言葉が突き刺さる。
親より先に死なないで。
子供に先立たれることがどれだけ親にとって悲しいか。自分のやることに口出しをせず、ずっと見守っていてくれた家族。本当は言いたいこと、聞きたいことがたくさんあっただろう。モカがやると決めたから自由にさせてくれていたのだ。
家族は一緒で過ごす時間が何より大切なのに、誰かが欠けていることの悲しさ。両親がいない事はラムの心に大きな傷をつけたし、ラムがいなくなってしまったこともまた彼の子供には寂しい思いをさせたはずだ。
家族の絆がことごとく破られてきたことを自分は知っていたのに、自分もそれを繰り返してしまうのか。もっと他にできることがあったはずではないかと、今更になって後悔する。自分はどれだけ大切な人達を悲しませてきたんだろう。
「お母さん、ごめんね」
「謝らないで……モカは何も悪くないの、ごめんね。こんな事言ってる場合じゃないのにね……」
「悲しませてごめん。みんなの愛情に乗っかるだけ乗っかって、何も返せなくてごめんね」
その言葉に一番下の姉がとうとう泣き崩れる。歳が一番近く一番仲が良かった。魔法学校に入学すると言った時は最後まで泣きながら反対したのもこの姉だ。誕生日に帰ってくるたびにいつでも家に帰ってきていいのよと毎回言われていた。
「馬鹿! それでいいのよ、あんたあたしたちの弟なんだよ!? 愛情は貸し借りじゃないでしょ!」
「うん」
「モカがどれだけ大変な思いしてるのか、私たちはずっと見てきたから。何もできなかったのは私たちのほうよ」
「そんなことない。それは絶対違うよブレンダ姉さん」
姉たちが順番に抱きしめてくれる。家族ってこんなに暖かいんだな、と実感する。ずっと当たり前にあるものだったから、まるで空気のようになってしまっていたのかもしれない。空気があるから、呼吸ができて生きていられる。それを忘れていた。
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