2人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
フナムシの襲撃が一旦止んだ。程なく、海軍から不審船と乗組員…フナムシの魔物使い…を捕まえたと連絡が入る。
灯台のお宝を狙っているのは他にもいるようだが、フナムシの件は一段落だ。勇者ふたりは灯台にくっついた宿舎に入った。
元泥棒サザナミは勇者を暖かくもてなした。
「寒かったでしょう。ささ、勇者様、お茶をどうぞ。焼き菓子も作りましたぞ。暖炉に近い席へ…コラ下男、そこぁ目下の人間が座るとこじゃねえ、どけな。しっしっ」
「なんでえ。なら勇者様こっちじゃねえか」
「こん馬鹿野郎、足元ば見ろ。少し石が出っ張っとるだろが。勇者様を危ねえとこ座らすんでねえ」
「けっ、面倒くせえ」
下男ゲンゴロはガタガタと乱暴に椅子を出して、窓際の席に座った。サザナミは、最近の若者は礼儀を知らんとかブツブツ言いつつ、壁際の危ない席に座った。
「あたしゃ長いこと人様のもんかすめて来ましたが、刑期も終えて今度こそ、マトモなお宝を手に入れて余生をのんびり過ごせますわ。勇者様ありがとうございます」
「ど、どういたしましてなのだ…」
ハタタカは礼儀正しく返事はしたが、今回の仕事に納得はしていなかった。宝が誰のものかもわからないのに、この人にあげていいのだろうか。
下男は、ハタタカのように礼儀正しくはなかった。
「はん、宝ったって、どうせ別の泥棒の隠し金だろ。マトモが聞いて呆れらあ」
「これだから若造は。地元の歴史くらい勉強せえ。エールエーデ灯台といえば、あの『殺し屋勇者カンクロ』の生まれた地じゃぞ。カンクロの隠し金に決まっとろうが。勇者の遺産じゃ」
ニヤリと笑う元泥棒を、勇者ふたりは真顔で見返した。
最初のコメントを投稿しよう!