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勇者ふたりが宿舎に入ると、暖炉の前で男がサザナミを押さえつけ何か怒鳴っていた。
「あっ勇者様たすけて!」
男が大きなナイフを勇者達に向け、部屋いっぱいにヤスデの魔物が現れた。
「近寄んな、コイツがどうなってもいいのか!」
「ああ、好きにしな」
ゲンゴロはスタスタ近寄り、一瞬驚いた男を雑に叩いて腕を捻り、ナイフを取り上げ床に押さえつけた。魔物はハタタカが直接触って灰にする。
「離せチクショウ!……くそ、なんで魔物がでねぇんだ! オレはただ、取り分を貰いに来ただけだ!」
「へえ…オメェ、コイツの昔の仲間か」
こっそり離れようとしたサザナミを、ゲンゴロは器用に足で押さえた。
「コイツ、今まで盗んだ金銀宝石を山分けする前に捕まっちまいやがった。オレの分寄越せや!」
「んなもん全部没収されたわい!」
「お前がそんなヘマするか! 本当に没収されたならもっと刑期長いだろ! 寄越せ!」
そんな言い合いの最中も、下男は主人にロープを取ってもらって男を縛っていた。ついでにサザナミの手足も縛ってニヤリとする。
「へえ…つまり、この灯台に隠してあんなぁ勇者の遺産じゃなく、オメェが盗んだカネってことかぃ」
「し…知らん、そんなもん知らんわい‼︎」
「そうかぃ、じゃ、ここの財宝は見っけたモン勝ちってこったなぁ」
ゲンゴロはテーブルを蹴っ飛ばした。
「や、やめろ! ワシのモンだぞ!」
「ふざけんなオレのだ!」
泥棒二人を尻目に、ゲンゴロは椅子もどけて、壁から飛び出た石を踏んだ。
カチッ。
床の一部が開くようになっていた。中に鞄や袋が幾つか入っている。ゲンゴロが袋を取り出して開けると、光る石と紙幣が床に散らばった。
「百年前の財宝にしちゃ、今時の金だなぁオイ」
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