予感

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予感

 彼女は手首によく、太めのバングルをつけていた。高価そうな、恐らくプラチナ製のバングルだった。夏でもひとみは職場ではカーディガンを羽織っていて、その腕を見る事はできない。時折蛍光灯の光を返すそのバングルに、瀧本は縄をかけられた彼女を幻視した。  あの細い腕に、少し病的に感じる色白の肌に、華奢な身体に縄をかけられたなら。彼女はどんな顔をするだろうか。どんな眼で、自分を見るだろうか。  瀧本のような嗜好を持つ者にとって、同じ感覚を持つ異性に出会う事は非常に難しかった。親しくなった異性にその嗜好について持ち出した途端、別れがやってくる事を何度も経験した。  いきおい、そういった店で満たすしか方法がなかったが、そういう店ではあくまで「ごっこ」として愉しむ事しかできない。それがもどかしかった。
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