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 瀧本はそう思った。そうだとしても、それは二人で決めた事だ。今、そう思う自分は、二人の決め事に反しているのではないか。これはひとみへの愛情ではないのか。ならばそれは、別れという道しかなかった。  去っていくタクシーのテイルライトが見えなくなるまで、瀧本は見送っていた。冷えた高層ビル街の夜気が、身体にまとわりついた。  どんなにその技を身に着けていても、縛るものが出来ないものはあった。  馴染んだひとみの肌の感触を逃がさずにいようとするように、コートのポケットに手を挿し込み、瀧本は歩き始めた。  サイレンを鳴らした救急車が目の前を通り過ぎていった。 (終)
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