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赤い綿ロープをまとめながら、瀧本はぶっきらぼうに訊いた。心のどこかは、ざわついていた。ひとみの様な雪白の肌の女には、赤い縄が合う。肌の白さを引き立て、乳房も脚も、そのシルエットが強調される。
ひとみはこくりと頷いた。明るめの栗色の髪がはらりと顔の横に落ちて、それをひとみは指先で耳の後ろにかけた。そうした仕種がもう、瀧本を揺らめかせると知っているかのような、そんな動きだった。
「誰とでも、という訳ではないんです」
瀧本が課長を務める事業二課にひとみが転属してきたのは、一年ほど前の事だった。
どこか陰のある佇まいで、今時の女子社員のような押し出しや、ずけずけとした物言いをしない社員だった。仕事は他の者よりもずっとできたし、気が利いて会議の議事録などを任せるととても詳細にまとめてくれる。ただ、殆ど口を利かない。それが瀧本には気に食わなかった。
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