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1 五人目のご令嬢
王家に生まれた以上、僕もいつかは決められた女性と結婚しなければいけない。だが、第三王子で、かつ兄達にはもう何人も子供がいるという状況もあって、僕の相手は、問題のない家柄の娘であれば構わないそうだ。
ただ僕は、結婚というものにまるで気が乗らない。理由?ただ面倒臭い、その一点だ。
そのため僕は、幼い頃から身の回りの世話をしてくれている爺に、結婚相手選びを丸投げ……いや、一任した。
そして今まさに僕は、候補のご令嬢達の情報を、爺から聞かされていた。
「……以上の5名でございます。さて若様、皆様にお会いになりますか?」
「ああ。……でも、普通に会うだけじゃ、少しつまらないな」
「若様はそう言うと思っておりました。……では、爺からひとつご提案を」
爺は、綺麗に整えた髭を撫でながら、まるで子供が面白い事を思い付いた時のような、わくわくを堪えきれないというような顔で言った。
「それぞれのご令嬢の家に、執事見習いとして忍び込んでみてはいかがでしょう?なあに、若様の地味顔なら、王子だとはバレますまい」
「おいおい爺……地味顔は若干傷つくぞ!」
自分でも、地味顔である自覚はある。が、他人に言われるとそれはそれで悲しい。
……だが、それはともかく、爺の提案には大いに興味がわいた。
「しかし爺、よくもまあ、そんな面白そうな事を思いつくな。ご令嬢も、家の中での振る舞いにはつい油断も出るだろう……彼女らの人となりを知るには手っ取り早そうだ」
「では?」
僕は身を乗り出すようにして答えた。
「やるに決まっているだろう?そうと決まれば、早速手配してくれ。訪問順は爺に任せる」
「……かしこまりました。では、日程が決まりましたら、またお知らせに参りますぞ」
「頼んだぞ爺。はは……楽しみだなあ」
そして、話はトントン拍子に進み、僕はそれぞれのご令嬢の家に、執事見習いとして1ヶ月ずつ滞在する事になった。
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