<22・運命。>

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 彼等が生き残るための隠れ蓑として類人猿を進化させ、そこに紛れて生活するようになったと。より長く隠蔽するために、進化した人類たちと交配し、人間の姿に化けることを選んだのだと。  それゆえに、彼等は高い魔力と魔法を維持しつつも、ドラゴンの姿に戻ることが困難となった。人間の血が濃くなった体では、ドラゴンの姿やそのままの能力は負担が大きすぎる。実際、血に目覚めた時に一瞬ドラゴンになっただけで、オスカーは死にかけた。そうだ、本人がそう言っていたではないか。  ということは、つまり。 「ひょっとして、ドラゴンを本格的に召喚するには……貴方もドラゴンの姿に戻らないといけないと、そういうことなのですか?」 「はい」  エミルの言葉に、オスカーは頷いた。 「ガワだけの召喚ならば、人の姿のままでもいけるでしょう。しかし、本格的に敵を攻撃し、脅威となるだけの本物のドラゴンを召喚しようとしたならば……わたくしはすべての力を解放し、ドラゴンの姿に戻らなければいけません。そしてそれは、一瞬戻るだけでも足りません。……間違いなくこの身は耐えられないことでしょう。ドラゴンを召喚し、敵を制圧したところで……わたくしの命も燃え尽きます。ほぼ確実に、です」  なぜ、とエミルは言葉を失う。  なぜ、彼はそのような話を、笑顔で語ることができるのだろう、と。  もうじき、北の大国がこちらに攻め入ってくる。ドラゴニスト王国とオーガスト聖国は結託して立ち向かわなければいけない、それもわかりきっている。そのリミットが、恐らく半年ももたずに訪れるだろうということも。それから、その北の大国に対抗するためには、ドラゴンを呼ぶ究極召喚の力が必要だということも聞いている。でも。 「なん、で」  ようやく、震える唇で紡ぎだせたのはその言葉のみだった。 「なんで、教えてくださらなかったのですか?そんな、大切な、こと……!」 「貴女が心優しい女性だとすぐに分かったからです」  オスカーは静かな声で告げた。 「わたくしを殺す魔法だと知っていれば、貴女様はきっと、究極召喚を作るための研究に協力してくださらなかったでしょう?」 「あ、当たり前です!だって私は……!」
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