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「正確には取らないわけではないのだ。我らの性質でな。外見年齢が、竜の力が強く目覚めた時点でほぼ固定されてしまうのよ。予は二十六歳で覚醒したゆえ、この見た目のままほぼ変わらないで年を取ることになってしまった。そして、竜の一族は背が低く、人間としては華奢であることが多い。……先祖にメスしかいなかったせいだと言われてはいるが、理屈はわからん。妻よりも小さいのは少々残念なことであるがなあ」
髪をくるくるといじってみせるバイロン。笑ってはいるが、本当はたくさん辛い目に遭ったのかもしれない、とエミルは俯く。
心のどこかで、嫉妬していた自分がいるのは事実なのだ。
竜の一族と鬼の一族。どちらもかつては国の支配者だったのに、あまりにも待遇が違いすぎる。隠れて、息をひそめるようにして生きていかなければいけない鬼の一族に対して、なんて竜の一族は優遇されているのかと。何故、鬼の一族も同じように幸福を享受できなかったのか、と。
確かに、金銭面で彼等が大きく恵まれているのは間違いないだろう。しかし、人の心とはそれだけで解決するものではないのだ。むしろ。
――王様を敬う人であればあるほど、不満が募るのかもしれない。何故、あんな得体のしれない一族を取り立ててやるのか、と。
嫉みと、嫉妬。
その上、一般人とは異なる美貌に若さともなれば。より恨みを買うのは免れられないことなのかもしれなかった。
「だから、こんな山奥にお屋敷を立てて暮らしている、のですか?」
「……魔法の研究がしやすいというのもあるから、一概にそれだけが理由ではないがな」
メイドが紅茶を入れてくれる。カップに手を伸ばしながらバイロンは告げた。
「竜の一族が、かつて宇宙の果てから舞い降りた異星人である……と言われているのは知っているな?それが事実かどうかは誰にもわからない。というか、我々も半信半疑よ。酸素も何もない宇宙をドラゴンが飛んできたなんて、ファンタジーもいいところであるからな。ただ、その伝説を信じる者は多い。そして、信じる者が多いということは恐れる者も多いということよ。いずれ力を取り戻し、再びこの世を支配しようとするのではないか、とな」
「……そのような御意思など、ないのでしょう?」
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