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<7・怪獣。>
そいつの体長は、少なく見ても10メートルほどはありそうな印象だった。
一歩踏み出すたびにのし、のし、のし、と地面が揺れるほどの衝撃がある。パキパキと時折折れるような音が響くのは、足元の花壇を踏みつけているせいなのか、あるいはタイルが割れているのか。
「こ、この森って、モンスターがいるんですか……!?」
思わずエミルはひっくり返った声を上げてしまう。緑色の怪獣らしき生き物は、拾い庭を吠えながらゆっくりと歩き回っていた。このままでは庭がめちゃくちゃになってしまうだろう。
というか、この屋敷もただではすまなそうである。まだこの窓から恐竜(?)がいる場所までは距離があるが――。
「私達の国にも、少しだけですがアヤカシと言われる生き物とか、害獣とかが残ってましたけど……あ、あんな大きなものが」
「確かにモンスターはいる。でも、あれはそういう類いのものではない」
「どういうことです?」
エミルの問に、それは、とバイロンは言葉を濁す。
「あれは、作られたものだ……人工的にな。すまぬ、エミル。嫁入りして早々、このようなことに巻き込んでしまって」
「それはどういう意味です……?」
確かに、あの怪獣の出現は不自然だった。山の木々より背が高いくらいの生き物なのだ。あれが遠くから歩いてきたのなら、まだ距離のある段階で気づくこともできただろう。でも。
怪物はまるで、この館の敷地から突然生えてきたように見えたのだ。何もない場所で爆発が起きて、そこから生まれ出たかのような。
人工的なものだとバイロンは告げた。ということは、もしや。
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
突然、つんざくような悲鳴が。何が、と思ったエミルは目を見開いた。怪獣が、何か小さなものを掴み上げているのがわかったからである。
その小さな物体には二本の腕があり、スカートを履いていて、二本の足をぶんぶんと振り回していた。まるで暴れてでもいるかのような。いや。
暴れているのだ、実際。怪獣に食われまいと、必死で。
「ひ、人が!ていうか、あれメイドさんでは……!?」
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