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それで、なんとなく話がつながった。
もしや、さっきの怪獣っぽいモンスターは。
「そのオスカー様が、あれを呼び出された……と」
「左様」
はぁ、とため息を漏らすバイロン。
「我が家の地下には……召喚魔法を訓練し、研究するための施設がある。今回のそなたの婚姻が、北の大国に対抗するためのものであることは知っておるな?我がドラゴニスト王国と、そなたのオーガスト聖国にとって、防衛力強化は急務と言っていい。ドラゴニスト家による、召喚魔法の守りもな。オスカーは責任感が強いゆえ、少しでも早く究極の魔法を完成させようと地下に籠もりっきりになっているのだ」
よいしょ、と彼は崩れた瓦礫に足をかけた。どうやら地下通路に降りるつもりらしい。エミルも慌てて飛び降りる。瓦礫を伝わなくても、自分の足腰ならばこれくらいの高さはどうということはない。
「かなり無茶をしているようでな。それで、時々コントロールしきれぬほどの強いモンスターを呼び出してしまうという事故が起きる。よもや、嫁入りしてきたばかりの花嫁の手を煩わせるなどとは思ってもみなかったが……いやはや、実に申し訳なかった、エミル」
「いえ、私は特に。使用人の皆様にも怪我がなくて良かったです。むしろ……」
むしろ嬉しかった、という言葉をエミルはギリギリで飲み込んだ。今まで己の力を示して、ここまで他人に感謝してもらったのは初めてのことであったのだから。
「そうよな。あやつらには後で特別手当を出さねば」
そんなエミルに気づいてか気づかずか、彼はひょいっと瓦礫の上に着地していた。エミルほどではないにせよ、彼もドラゴニスト家の者として相応の身体能力を持ち合わせているということらしい。
「真の召喚魔法を完成させるためには、オスカーだけの力では足りぬ。優れた導き手が、支え手がいなければ」
ほら、と彼が指差す先には破壊された鋼の扉、だったと思しきものがある。エミルは驚いた。その奥の広間が思いがけずに明るかったがゆえに。そして。
「紹介しよう。あそこにいるのが……そなたの夫となる我が息子、オスカーだ」
バイロンが指差す先にいたのが。椅子に座って一心不乱で絵を描く――まだ幼い、少年の見目をした者であったがゆえに。
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