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第1話『初めての、御使い』 テーマ:天使
「今日、私は天使なの! 凄いでしょ」
ミカは胸を張って肉屋の店主に宣言した。
「へえ、天使?」
「そうなの。だから1人でお使いもできるんだから!」
ミカの言葉で、店主は察した。ああ、天使は「御使」と呼ぶから、それと「おつかい」をかけてやがんな。あの母ちゃんも中々子どもの扱いが様になってきた。
「初めてのおつかいかな?」
奥で女将さんが呟く。どちらかと言うと初めての”みつかい"が正しいだろう。
意味もわからず名乗るミカが可愛らしく、確かに天使だと思った店主はすぐにチキンを用意して会計を済ませた。
歩いている最中、ミカの頬に水滴が落ちてきた。イヴなのに、雪ではないのが悔しくて、ミカは雨雲を恨めしく睨んだ。冷たい。傘を持ってないので濡れてしまっている。肉だけは濡らさないように、袋を丸めて抱え込むようにして持つ。黙々と歩くと、遠くから速足で迫る音が聞こえてきた。
「ミカ!」
母は息を切らして駆け寄り、抱きしめてきた。
「ごめんねミカ!雨が降るかもしれないのに傘を渡してなくて」
凍えていたミカの身体に、母の体は温かかった。
「ミカ、泣かなかったよ。天使になれてた?」
「うん、立派なおつかい…じゃ無かった。御使ぶりだったよ」
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