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第2話『ベルと神様』 テーマ:ベル
1人で過ごすクリスマスを「シングルベル」と言った奴は天才だ。お陰でクリスマス前に失恋したオレは、見事悪友どもからからかわれ続けた。
「お兄さん、コレ見てみなよ」
道で叩き売りしてる親父がそんな事を言ってきた。手にしてるのはベルである。
「要りませんよ」
「シングルベルだろ? ホラ、どうだ」
何で分かるんだ。そんなに非リア臭がしていたのか? オレは観念して歩み寄る。
「兄ちゃんが体を揺らしても音なんか出ないが、このベルは出るよな?」
「当然でしょう」
「でも兄ちゃんは、このベルより多くの音楽を歌えるぞ」
そりゃ、そうだが。親父は「それぞれ得意不得意があるんだ。焦らずやりゃ良いさ」だと。
「このベルの球はどこにある?」
そりゃ、ベルの周りの金属の中では。と言ったら、親父は続けた。
「ベルは儂の手の中に。儂の手は儂の中に。儂は街の中に。街は日本の中に。日本は世界の中に世界は神様の中に」
どんどん広がってきやがる。
「なに、宗教か何かですか?」
「まぁ聞きんさい。で、神様はどこに居る?」
「さあ。宇宙ですか?」
「小さなベルの中に、だよ」
親父はベルの内側を見せてきた。そこにはオレの顔が反射していた。
「お客様は神様……ってな」
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