日常

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日常

 朝、目が覚めた時。  隣で眠る君が冷たくなっていたらと想像したら。  恐ろしくて夜、眠ることができなくなった。  もう何年もずっとそう。  君が――……。  君が、余命宣告をされたその日から、ずっと。  ハッと目を覚ますと、辺りは真っ暗だった。  頭の上に置いたスマホは、午前二時を冷たく表示する。  ひんやりと冷たい空気が漂う寝室で、ふと、隣を見やる。  眠る彼女は、動かない。  震える手でそっと彼女の頬を撫でる。  ううん、と小さくうなる声が響いて、ほっと息を吐いた。  冷たくないし、眠っているだけ。  震える手を放し、ずれていた毛布を首までかけてやる。  瞬間的に眠くはなったが、逆に目は冴えてしまったらしい。これ以上眠ろうとも思えず、スマホを開く。  飛び込んできた無機物な白い光に、目を細めた。 ――薬が効果を出さないから、明日にでも病院に行こう。  スケジュールアプリに入力する。と、彼女の入力したスケジュールに嫌でも目が行ってしまう。  彼女は明後日に通院予定だった。  ふっと目の前が暗くなったように感じた。 ――ああ、ダメだ、ダメ。  考えてはいけない、と処方されていた薬に手を出す。本当はダメだとわかっていても、彼女のこれからを考えることが、怖かった。  薬を飲んで少し落ち着いたところでぐわっと眠気が襲ってくる。  そのまま促されるように、そっと目を閉じた。
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