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辺を見回しても人が通った後などは
見受けられなかった、しかしこれだけの落ち葉があったら人の痕跡などわからないかも知れない
りんでさえ苦戦しているようだった。
「夏凛さん!なんか水の流れる音が聞こえませんか?」
「えっ?」
缶助に言われ耳をすます......
そう言われれば何となく聞こえる
せせらぎの音......
「ほんとだ!聞こえるぞ!水の流れる音だ!」
私がそう言うと、りんが更に下に降りて行った
勾配がだいぶ緩やかになって落ち葉も少なく
なり歩きやすくなってきた。
りんを先頭に私と缶助が後に続く
小さな小川がそこにあった。
「水があった!これで少しは希望が
持てるぞ!」
缶ちゃんが叫んだ。
人は、食料がなくても数日は生きられる
だが、水分は別だ!
水がなければほんの、いちにちふつかで
体調が崩れ最悪の場合は命に関わるから
小川があった事で最悪は逃れられる
季節がいくら秋だからといっても
水は絶対に必要な物だから、、、。
りんが下流に向かって歩き出した。
地面に鼻を擦らせながら健太君の匂いを
たどって行く。
小川に接してから20〜30メートルくらいだろうか、りんが立ち止まった。
同じ場所でクルクルと回りながら匂いを
嗅いでいる、
「りん!どうしたの?」
りんに聞いてみたが、りんは地面の匂いを
嗅いでいるだけ......
すると、りんが小川の対岸にむかって
いきなり唸り声を上げて吠え出した!
それは如何にも敵意を剥き出しにした
吠える声だった。
何事かと思い私は、りんが吠えている
方を見た!
するとそこには.........
体長2メートル近くはありそうな
大型の猪がいたのだ!
缶ちゃんもそれに気づいてすぐに私の前に
立ちはだかった。
そばに落ちている太い木の枝をすかさず
拾い上げ猪に向かって構える。
猪のすぐ脇には直径30センチくらいの
木が伸びていた。
何気に上を見ると何やら白い物がみえた、
空はだいぶ明るくなって来ているのだが
森の中はまだ薄暗い、はっきりとは見えないが
人影のようだった。
「缶ちゃん、あの木の上に誰かいるみたい」
私が缶ちゃんに耳打ちすると缶ちゃんも
さっと上を見た。
「夏凛さん!健太君だ!すぐに無線でお爺さん達に知らせて下さい!」
缶ちゃんが言った。
猪に刺激を与えないようにそっと缶ちゃんの腰
に下げてある無線機を取り出し
上にいる猫飼爺さんに連絡をした、
だが急勾配を降りて来たせいか無線が通じない
「無線通じないよ!」
缶ちゃんは猪から目を離さなかった、
りんも身体を低く構え唸っている
「夏凛さん!りんを連れて上に上がって下さい」
缶ちゃんはそう言ったが私は缶ちゃんを
ひとりにして置けなくてその場を動かなかった
すると今度は
「早くりんを連れて上にいけ!」と
怒鳴った。
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