気になる生徒

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気になる生徒

よく晴れた日。 桜が全て散ってしまった中始まった入学式に日詰両(ひづめりょう)はため息をついた。 「日詰先生。ため息聞こえてますよ、」 隣に立っている、鮫村はそう言ってクスリと笑った。鮫村聖(さめむらひじり)。数学の先生で高校からの腐れ縁が続いているうちの一人だ。 「こんな桜が散り終わった後で校長の桜の散る季節になりましたはないだろ。」 「それは言わない約束ですよ」 校長の無駄に長いありがたいお言葉を聞きながら外を眺めるとやっぱり桜の木にはひとつも花は咲いていない。校長とは名ばかりのハゲが居座るもので、まぁあれも全てインターネットで検索したものなのだろう。 「そういえば、今回の新入生代表の挨拶は外部生でしたよね」 「入試で満点だったらしいですよ。内部生も頭が上がりませんね」 満点。それはまたすごい結果を残したものだと感嘆していると、いつの間にか校長の祝辞は終わっていた。つぎは、話題の新入生代表挨拶だ。 「新入生代表挨拶、平方鳴(ひらかためい)。」 「はい。」 透き通った声が、体育館に響いた。マイクも通さずにこんなに通る声はもはや才能と言えるのでは無いかと思うほど、よく通る声をしている。 返事と共に立ち上がったのは、真面目そうなガリ勉とかではなく、どこにでもいるような男子高校生だった。いや、顔の整った男子高校生だった。 「天は二物を与えたんですよ、ほら」 「そんな自分を卑下するなって、鮫村。」 口調を直すのも忘れて、軽口を叩いていると隣の川口先生が咳払いをした。警告だ。 危ない危ない、気をつけなければ。 新入生代表の挨拶は圧巻であった。校長の祝辞のようにつらつらとただ、インターネットで拾ったものではないような平方自身の言葉のように感じるそれは本当に神が二物を与えたように感じた。 頭脳明晰で容姿端麗。これ以上ない二物ではある。 戻っていく平方を目で追う。どこか目を引く彼は自分の席に戻ると横の席の男にニコリと人懐っこい笑顔を見せた。 「笑った…」 「日詰先生、漏れてますよ」 「はい、すみません。」 川口先生のお言葉をちょうだいした。
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