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「で?両はわかったの?」
「分からないから清に話したんだろ」
そういうと目の前の真っ赤な口紅を塗った彼はそうねぇと、考えこんだ。清は大学からの付き合いで、今はバーを経営している。見た目はほぼ女と変わらないが、声がゴリゴリの男だ。いまは、ゴリゴリとか言わないんだっけ。
「清〜。俺もうわかんない〜」
「両は人泣かせだからねぇ。見た目はいいのに中身は幼稚園のような情緒って言うか、幼すぎるのよ。純粋とはまた別の意味よ。なんて言うか本当にまだ発達しきれてないのよ。」
清はオレンジ色のカクテルを差し出した。今日のおすすめらしい。
「発達?」
「両は好きってひとつだと思う?」
「え?ひとつしかないでしょ。他に何があんの?」
質問の意図が分からず聞き返すと大きなため息をつかれてしまった。いや、ほんとほかに何があるんだ。
「見た目がいいからこれがフォローできるって訳。顔がいいのがいいのか悪いのかよく分からないわ。あなたに好きって言った生徒のことが可哀想になってきたわ」
「はぁ?」
やれやれと言った感じを出して他の客の話し相手に行ってしまった清をじっと見つめる。なんで、俺が悪いみたいな感じなんだ。いや、悪いのは自覚しているけど、何が悪かったのか教えてくれないとまた松坂を傷つけてしまうじゃないか。松坂は俺の生徒なんだから、そんなことしたら教師と名乗るのも恥ずかくなる。ほんと、何が悪いのか俺の職のためにも教えてくれ。
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