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「両。お前、いくらなんでも平方君のこと見すぎ」
カチンとコップに入った丸い氷の割れる音がした。
「そんなに見ていたか?」
「まぁ、川口先生が平方君がお前になにかしたか俺に聞いてくるほどにな、」
鮫村にそう言われて大きく目を見開いた。俺そんなにあいつの事見ていたか。確かに人よりも気にはしていたけど、周りにバレるほどではないと思う。
「お前さ、自分の影響力考えろよ。生徒ほとんどがお前を見てキャーキャー言うんだぞ?そいつが自分の相手せずに平方ばっか見てろよ。噂が回りにまわって本人のとこに運ばれるのも時間の問題だぞ」
なるほど。
と、腑に落ちるわけがない。そんなに見ていないはずなのに同僚である川口先生にバレて気まづいし、他の生徒には依怙贔屓だなんだと裏で言われているのも引っかかる。
「俺、みんなに平等なのにさぁ」
「お前の場合はそこに大切がないからだろ?」
俺が過去ほとんどの彼女に、その他と同じ扱いが嫌だといった理由で振られているのを知っている鮫村は、鼻で笑いながらそう言った。
「まぁ、俺多分パンセクシャルだし」
コップの縁をなぞりながらそういうと、鮫村の手からハイボールの入ったコップがごとりと落ちた。幸いあまり持ち上げてなかったためバランスを崩したコップの角を打ち付けるだけに済んだ。
「別に驚くことじゃないだろ?」
バレてると思ってたし。
「いや、そうだけど。どっちかと言うとお前が俺にカミングアウトすることに驚いた。お前、お前の思っている以上に俺の事好きだろ?」
なにそれ。
馬鹿らしくて吹き出してしまった。鮫村の自意識過剰さをバカにしながらも確かにと心のどこかで思ったのは否めない。好きというより、信頼しているという方が近い。腐れ縁にしては長いし俺の中で知らず知らずのうちに鮫村が信頼に値達してきたのだろう。
「お前キモイよ。でも、良い奴だから好き」
「うわぁ。来世でよろしく。」
告ってもないのに振られた。
鮫村はハハハと分かりやすく声を上げて笑い、手の中にあるコップを持ち直し酒を煽った。
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