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「どうしたんだ?松坂」
目の前にちょこんと座った松坂の顔は真っ赤だ。
何があったのかよく分からない。昼にあった時には変わらないように見えたのに、今の彼は全く別人のようだ。
「あのさ、日詰先生。」
やっと口を開いた松坂の声は震えている。
「どうした?」
「あの、俺さ」
何かを言い淀む松坂はキョロキョロと目線は合うことはなくずっと行ったり来たりしている。いつものような自信満々の彼はどこに行ったのだろうか。
「俺さ、」
「あぁ。」
パッと前を向いた松坂の顔はこれでもかというほどゆでダコのように真っ赤に染まっていた。そして、なんとなく予想が着いた。多分松坂は、俺のことが
「好きです。先生のことが、好き…です」
だんだんとしぼんでいく声は最後まではっきりと耳に届いた。やっぱり。そう思ってしまう自分は冷たいのだろうか。松坂くんはそういうと俯いてじっとなにかに耐えるように小さくなっている。俺はそれに反比例して冷静にこれからの事を考えていた。こういう時どう返せばいいとか、どう接すればいいとか未だに正解が分からない。鮫村は良い奴だ。だから、こういう時に多分正解を引き当てることが出来る。鮫村ならどうするだろうか。そう初めに考えるけれど考えても分かるはずがないから、1つ息を吐いて静かに松坂の名前を呼んだ。
「松坂。悪いがお前とは先生と生徒でお前の気持ちに応えることができない。松坂は俺のこと尊敬してるって言ってくてたよな。もしかしたら、尊敬と恋慕を間違えてるんじゃないか?」
松坂は名前を呼ばれた瞬間顔を上げ俺を見ていたが俺が吐く言葉を聞く度にだんだんと顔を青白くさせてまた俯いてしまった。
「先生、俺の言ったこと取り消せれますか?」
………あっていたのか?
俯いていて松坂の表情は読み取ることが出来ない。
「あぁ」
「じゃあ、今日のこと忘れて下さい。俺、多分先生の言う通り間違っていた気がするんで、じゃあ俺もう帰らないと。失礼します」
「あっちょっ松坂!」
松坂の顔を見ることも出来ず、走って教室から出ていった松坂を追いかけることもできず。
俺はやはり何か間違えたらしい。
「人でなしってセンセーのこと言うんですね。」
何を間違えたのだろうかと松坂のことを考えていると、教室の奥から最近よく聞くようになった声が聞こえた。
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