『愛のため、さよならと言おう』- KAKKO(喝火) -

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102 w168 「お父さん、逃げてった奥さんって随分と薄情な人なんだね。  あれだよ、時代ごとの運気みたいなのも周期的に上下するし、金融もそう、人生もそうらしいよ、山あり谷あり。お父さんは今少しばかし低迷してるけどまた上昇していくよきっと」 「淳平に励まされるとは、有難いな」 「ところでさ、お母さんは今すごい上昇気流だよ。  ねっ? お姉(おねぇ)」  淳平ったら、何を話し始めようとしているの?  それとも私に話させようと言うのか……う~ん見えない。  奴の本意が読めない~。 「ほう~、上昇気流ってことは何かいいことあったのか」 「お姉(おねぇ)の大学卒業を待って結婚するんだぜ」 「結婚って、お母さんがか?」 「お母さんが若い恋人出来てたなんて、聞いた時ほんとに吃驚したわ」 「若い恋人? ほんとに?   働いてたってことはちらっと聞いたけどあれか、同じ職場の人なのか」  お母さんに恋人がいるってことを話したのはいいけど、淳平もお父さんに 話したことで変なテンションになっちゃって、ちゃんとお父さんの質問に 答えられないみたい。  しばらくお父さんと同じで私も淳平の説明を待ってたけど少し息苦しそうだ。  しゃあない、それではわたしめが話そうか。 「お母さんが働いてたっていうのはちょっと訳ありでどこかに 勤めに出てたって訳じゃないの」 「……」 「お父さん、嫌味じゃないからそれだけは分かって私の話を聞いてね」 「わかった」 「やっぱりね、お父さんが家を出てっちゃってお母さん淋しかったのかも しれない。  私も後から知ったんだけど、しばらく小説書いてたらしいの。  それも小説を書きたくてたまらないからという理由ではなくて、 淋しさや不安とかマイナスの感情を捨てるために小説を書いたって言ってた、  お母さん。 『一心不乱に書きまくったのよ』って言ってた」 3/13 '24.9.30
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