『愛のため、さよならと言おう』- KAKKO(喝火) -

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105  子供たちも百子が声を掛けた為自分に顔を見せてくれたが、 ふたりの様子を見ていると、今後この子たちに自分は必要のない 人間なのだと感じた。  仕事ばかりの仕事人間であげくが母親もろとも子らを捨てたんだ自分は。  そんな自分が親ずらしていいはずがない。  必要とされれば寄り添えばいいが、必要とされないのであれば今後は 遠く離れた地から安寧を願うのみにしよう……と思った。  それでも伸之が(いとま)を告げると、子供たちはまた下まで 降りて来て玄関先まで母親と一緒に三人で見送ってくれた。  ずっと自分も主として住まっていた我が家をじっくりと振り返り、 目に焼き付け伸之は百子の住まう家を辞した。   百子の気持ちを自分に向ける為の努力はしようと考えていたが、 すでに結婚を決めた人がいる上にその後の茜や淳平たちからの話振りだと もう既に実質事実婚状態なのが透けて見えた。  手遅れという言葉が胸に刺さる。  ダメ出しが茜の一言だった。 「お父さん、お相手の山下さんってお母さんよりも8才も年下なのよ~。 しかもイケメンさんなの」  ほんとに今日という日は驚かされてばかりだった。  これまでつれなくされてきた父親に『お父さんは今少しばかし低迷してるけどまた上昇していくよきっと』と言ってくれた息子、淳平の温かみのある言葉になんとか癒されながら伸之は帰路についた。 2/13 '24.10.3
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