『愛のため、さよならと言おう』- KAKKO(喝火) -

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108 ◇百合子と早瀬 百合子は逃げるようにして息子を連れ早瀬の家を後にした。  そして伸之から請求さた500万円の慰謝料の為、 仕事を探し必死に働いた。  百合子は事実婚だった元夫の石田伸之から勝手に多額の金を 持ち出しており、窃盗の罪は籍の入っていない妻ということで 微妙なラインであったが訴えられた以上、道義的にも返金しなければならず、伸之に対して金の持ち出しと托卵の罪で500万円の慰謝料を請求された。  伸之からの接触でそれらのことを知った早瀬が全額支払うと言ってくれたが  百合子は半分は自分で払いますからと言い、早瀬の家から出た後、 立て替えしてくれた早瀬に毎月支払うことになった。  実家に住まわせてもらっているとはいえ、両親にもいうほどの余裕はなく 自分たちの生活費と慰謝料の返済の為、百合子は仕事を探し朝な夕な必死に 働いた。  百合子たち親子が出て行った後、早瀬の両親は翔麻のいない淋しさを ことあるごとに早瀬に訴えた。 「誠、夏休みには絶対翔麻を遊びに来させてね。  ちゃんと百合子さんに伝えておいてよ」  春になると、まだ4月だというのに先の夏のことを言い出す母親に 早瀬は苦笑するしかなかった。           ◇ ◇ ◇ ◇  早瀬はコロナのせいもあり、昨年の夏に転職していた。  前の職場では交際している恋人がいて転職と共に結婚の話が出ていた。  早瀬はアラフォーなので結婚に関しては遅いくらいなのだが 焦りはなかった。  相手の彼女音羽芽衣子は28才と微妙な年齢だった。  なので彼女から結婚話が出た時もさほど驚きはしなかった。  そうだよなぁ~、ぼちぼちそういうのも考える時期にきたのか、という 具合に。 2/16 '24.10.7
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