『愛のため、さよならと言おう』- KAKKO(喝火) -

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1 ◇初詣参拝  百子は自分も手を合わせ拝みながら隣で同じように参拝している夫の 伸之の様子をチラりと伺う。  自分は勿論のこと、今年も一年家族皆つつがなく平穏無事に過ごせますようにと祈願しつつ、またここまで夫婦仲睦まじくこれたことなどに対するお礼、  感謝の気持ちなどを申し上げた。  果たして……夫の伸之は何を思い何を祈願したのだろう。  そうは思うものの 『知りたいか? 夫の腹の底を。覗いてみたいか?』 と問われれば、NOと答えるだろう。  百子は、世の中には曖昧なままでいいこともあるのだ、と いうようなことを飲み込める年代に達していた。
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