『愛のため、さよならと言おう』- KAKKO(喝火) -

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25             その週末、百合子はいつもよく行く元町にある古書店へぶらりと 立ち寄ってみた。  好きな本に囲まれていると気晴らしになる。  小一時間ほど店内で過ごし店を出た。  もう夕暮れ時になっていた。  夕暮れ時って魔法が掛かるのよね。  淋しい病に掛けられるのだ。  さてと、家に帰ったらケーキでも焼こうかと少し自分を元気づけて 歩き出す。           ◇ ◇ ◇ ◇ 『伊達っ!』 誰かに呼び止められる。  百合子は周囲をキョロキョロする。  呼んだのが少し先の左前方にいる人物だと分かった。  その人物とは学生時代グループでよく遊び仲良くしていた 同級生の早瀬誠だった。 「よっ、久しぶり。秋野垢抜けて綺麗なお姉さんになってんじゃん。  今一人? 俺、一人でブラブラしてるところなんだ。お茶でもどう?」 「ひゃあ~、懐かしいよね。行く行く……」  結局お茶の後、まだまだ話し足りない雰囲気になり、私と早瀬くんは 彼が何度か行ったことのあるというバーへ行くことに。  そこでも話が弾み楽しいお酒になった。
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