『愛のため、さよならと言おう』- KAKKO(喝火) -

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36    k6  小説は大抵フィクションで自由に創作して書くものだと思ってきたが 自分の経験した日記のようなものを小説にしたからとて、ほとんどの人たちには それがノンフィクションだなんて分かるはずもなく、だから百子は 手っ取り早く書けそうな自分の身近で起きたことを、つまり日記みたいなものを 小説にしてしまえ、と決めたのだった。  やっぱり物語の出だしは夫の伸之との交際が始まった頃からで、あの霊能者の話も盛り込み、とにかく書いて書いて書きまくり小説として進めていった。  記憶の彼方から当時の自分の想いなどを引っ張り出してくる作業は 思っていたほど苦ではなかった。  百子は実は独身時代から子供たちが幼少期の頃まで腐女子でBL本を 愛読していた時期がある。  当時売れっ子BL作家があとがきで書いていた話がずっと心に残っていた。 『今回は主役キャラの言動が書いてるうちにどんどん勝手に動き(歩き)出し、予想よりも遥かに良い作品になりました』 という内容のことが書かれていた。  小説ってどういうことを書くか、っていうことは最初に決めて書くと 思うのだけど、書きながらキャラが勝手に動き出すってどういうこと?  そんなことが起きるなんて……すごい世界があるのだと知り、そんな世界感を自分も体験できるものならぜひとも体験してみたい、というような望みが あった為、自分の精神の安定を保つために何かを始めようと思った時、真っ先に 小説を書こうと思ったのだ。  書く練習を兼ねて自伝をフィクションの小説として出すべく、記憶の彼方から 書くべきことを引っ張り出してきて書いて書いて書きまくった。  小説の書き方とか、そんなの知ったぁこっちゃねぇ、って感じで。  だって日記なら好きに書いていいでしょ?   一通り書き終えて一旦は燃え尽きた。   2/11 '24.7.25
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