『愛のため、さよならと言おう』- KAKKO(喝火) -

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38  夫の伸之が家を出て3ヶ月、百子が投稿サイトへ掲載を始めて3週間ばかり   経った頃のこと、大手出版社の山下司という人物からメールが届いた。  その内容とは、百子にとって狐につままれたようなものだった。  要はこの時百子の書いた作品が編集者によってスコップされたということ。  気にいったのでできれば残りの文章を早急に送ってほしい。  最終的に百子の作品をコミカライズさせてほしい、という要望だったのだ。 『えー、最後まで読んでないのに?   そんなこと決められるものなの?  コンテストの結果待ちだって随分先なのに』  でも百子には分かっていた。  コンテストで受賞できるなどとは思ってなかったし、今回のように もの好きな人から推してもらわない限りコミックにしてもらうなんて この先一生ないだろうということは。  百子は翌々日の早朝に残りの文章をテキストにコピペして山下へ メールに添付して送った。  この話はフィクションではなく実話である、ということも正直に書いた。  後はフィクションではなくて実話だという部分を彼がどんなふうに 取り扱うのか、任せてればいいだけ。  正直に白状したので、後はお任せだから百子は気が楽だった。  コミカライズされるなら、電子書籍は一旦中断よね、うん中断しようっと。  山下から翌日には連絡か届き、やはりコミックにしたいとのことで 早速打ち合わせの打診があった。  山下のほうからどこか外でという提案を貰ったが、外だと落ち着かないし まだ息子は小学生で家を空けるのも躊躇われ、自宅での打ち合わせを百子は 提案した。 2/10 '24.7.27
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