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山下との打ち合わせは彼の来訪後、ホットコーヒーを出してから
進められた。
「山下さん、この度は選んでいただいてありがとうございます!
ですけどこんなどこにでもあるような話、つまらなくないですか?」
「石田さん、そんなことを言うのは止めてください。
僕はね、将来好きな男性が別の女性を選ぶかもしれないと霊能者から告げられてもその時、相手のことをすごく好きで一生添い遂げられなくても……人生の途中までであっても一緒に暮らしたいと願い結婚を決意した石田さんのことを素敵だと思いました。
ほんとはつまらないなんて思ってないんじゃないですか?
そして旦那さんから別れを告げられた時も毅然とした態度で離婚の
取り決めに臨んでますよね。
ここのシーンでも清々しいくらいの潔さにジーンときました。
とにかく石田さんの作品には随所に僕の琴線に触れるところがあったのです」
◇ ◇ ◇ ◇
そう返した山下という人物、外国人張りの鼻筋の通ったきれいな形状の鼻を持ち、垂れ下がり気味の大きな二重瞼の目は穏やかで優し気な印象をもたらし、挨拶を交わした時のにこやかな表情は好人物に見えた。
止めてくださいと言った時も彼の目尻は下がっていた。
性格の良さが滲み出ているイケメンで、誠実そうで話しやすそうな人だなと
百子は思った。
それにこうもあからさまに実直に自分の生きざまを褒められて好印象を
持たずにいられるわけがない。
「ありがとうございます。
文章力なんてちっともありませんけど、話の内容に共鳴していただいて、
少し自信が沸いてきました。
作品のというより、自分の生きざまが漫画になって大勢の人たちの目に
触れるなんてうれしいような怖いような、正直そんな気持ちです」
「では、自伝ということで……」
「あの、そのことですが……。
3/11 '24.7.28
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