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『きよしこのヤロー、うざいんだよ、気色悪いんだよ。死んじまぇ』
『見ているだけで辛気臭いのがうつるんだよ』
『キャハハ、ばっかじゃねぇの』
『ばい菌がうつるだろ。近寄んな』
大音量で葬儀場に流れたのは、清くんが亡くなったあと遺族のもとに謝罪に訪れた違うクラスの生徒で、N中学から別の中学校へ転校した生徒が仏壇に置いていったカセットテープだった。クラス対抗の合唱大会があって、休んでいた生徒のために録音していたカセットテープにたまたま入り込んでいた。
葬儀場がざわつき始めた。
『お前みたいなうじ虫。生きている価値なんてないんだよ。死ね!いいから突き落とせ!』
『勝紀くん、止めて』
そこでストップボタンを押す留衣さん。
「技術の進歩ってすごいわよね。20年前はかろうじてきよしこのヤローの部分しか聞き取れなかったんだけど、すごいわよね。勝紀さん、あなたの研究がまさか自分の首を絞めることになるとはね。ほんとに皮肉よね。それに私は井戸川亜子ではないわ。清の姉よ。遠藤さんお久しぶりです。井戸川さんのことも忘れているなんてね滑稽だわ」
留衣さんがハハハと高らかに笑った。
勝紀さんの両親はその声が息子の声だとすぐに気付き青ざめていた。数人の男性たちが互いに顔を合わせ気まずそうにしていた。
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