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私は留衣さんが葬儀場から出てくるのを車の中で待っていた。二月に生まれたばかりの息子をあやしながら。サイレンの音がして救急車が何台も駐車場に入ってきて騒然となった。
「遅くなってごめんね。何人か気分が悪くなった人がいるみたいよ。亜子ちゃん帰りましょう」
後部座席に乗り込んだ留衣さんが不適な笑みを浮かべた。何があったのか怖くて聞けなかった。世の中には知らないほうがいいこともあるもの。
次から次ぎにストレッチャーで救急車に運ばれていく参列者たち。そのなかに春美さんがいたと知ったのはずっとあとのことだった。
清くんは勝紀さんだけでなく、胎児まであの世へと連れていった。
今年もまたクリスマスソングが華やかに聖夜を彩る季節が巡ってくる。当時産まれたばかりだった息子は14歳になった。
東日本大震災後の混乱の最中、留衣さんは何も言わずお寺に預けていた清くんの骨壺を持って姿を消した。今は音信不通になっている。元気でいることをただ願うばかりである。
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